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written by KANA

私が尾道で働く理由   〖綯う-nau-〗 古里舞







今日は尾道の本土側から橋を1本渡った、気軽に行ける瀬戸内の島、向島(むかいしま)へ遊びに行ってきました。ひと昔前は住民の方々の暮らしの場として知られていた向島ですが、ここ数年で続々と新しいお店ができ、オススメスポット満載のエリアとなりました。車で〖尾道大橋〗を渡って行くのはもちろん、レトロ感たっぷりのフェリー(乗船時間約5分)でも立ち寄れるので、尾道観光にこられた方も自転車や徒歩で気軽に行ける島なんです。
本日取材に伺ったのは、2年前一度店舗の取材で伺わせてもらったアトリエ-綯う-(なう)さん。以前は向島の中央辺りにある総合複合施設〖てへてハイツ(元・てへてハイツ/現・竈キッチン&五右衛門風呂)〗内にアトリエを構えていましたが、2021年11月に同じ向島内の海沿い近くに新しくお店を移転されたとの事。
海に近い通称〖歌地区〗に構えられた新しいアトリエは約2年前に建てられた古民家を店主さんがリノベーションした古民家再生アトリエ。




ドライフラワーやフラワーオーナメント、刺繍アクセサリーなどを店主であるマイさんがひとつひとつ愛情をたっぷり込めて制作・販売しているアトリエとなっています。
アトリエ内は一歩入ると本の世界に飛び込んだかのような、独特の世界観がとにかく魅力的で、こぢんまりとした室内の壁、いろいろな形の花瓶、アンティーク棚の中など、ありとあらゆる場所に所狭しと並ぶドライフラワーの数々が圧巻です。





-Q.マイさんお久しぶりです!今回は新しいアトリエにお邪魔したい!という私たちの希望と共にお邪魔させて頂きました。順を追いながらいろいろお話聞かせてください。 現在尾道に移住されているマイさんですが、初めて尾道を訪れたのはいつ頃ですか?-

A.そうですね、初めて尾道を訪れたのは26才の時だったかな。当時は京都に住んでいたのですが、尾道を知る機会があり、ふと〖行ってみたい!〗という気になって訪れたのが初の尾道旅ですね。レンタサイクルを使って向島に行ったのを覚えていますが、そう!その時レンタサイクルで訪れたのが今のアトリエがあるこの歌地区なんです!


-この辺りはどちらかというと(地元の方の)居住エリアが広がっていますよね。お店が立ち並んでいる訳ではないこの地区に初めての尾道旅で訪れるとは、なかなかコアな旅コースですね(笑)。初めての尾道旅で訪れた場所に今のアトリエが在る、というのも何だか運命的なものを感じますね!-

本当にそう思います。最終的に新店舗探しでこの場所に巡り合えた時、あ、ここだなぁって思いました。そういう引き合わせって必ずあるんだと思います。


-とても素敵な引き合わせですね。初めての尾道旅での思い出や感じたことなどお聞きしたいです。-


始めて尾道を旅した時、『何て柔らかい空気の流れる場所なんだろう』と思いました。海がすぐ傍にあるのに磯の香りもほとんどなく、優しくて、爽やかというか、どことなく丸みのある空気を感じましたね。




自分の足でしっかり立つ―。作家への第一歩


初めて尾道を旅し、その魅力に触れたマイさん。その3年後には尾道に移住し、アトリエを構える事となりますが、その少し前の、作家人生が始まるきっかけとなった作品作りについても伺ってみました。


-マイさんのご出身地はどちらですか?-


出身は熊本県です。その後京都で6年程暮らしていた時初めて尾道を訪れたんです。


-ご出身は熊本県なんですね。勝手な想像ですが、尾道とはまた違った熱気というか、パワーを感じる地ですよね。-

20歳頃まで暮らしていましたが、熊本の都市部は新しいものや環境を取り入れることに柔軟な街、という印象かな。そういうパワーが街全体を発展させているような場所だったんじゃないかなと思います。


-なるほど。流行や新しいモノを発信するって活気の一つになりますよね。-

私はどちらかというと自然体であったり、自由にのんびりと過ごす時間が大好きたったので、移住後の尾道での暮らしは自分自身の肌に合ってるなと感じています。


-移住決断の大きな要素であるマイさんの作品づくりについて、色々教えてください。-


作品づくりは10年程前から始めました。当時はアクセサリーを主に作っていて、今とは作品のテイストも結構違ってたんですよ。友人や大切な人たちに作ってプレゼントする、というのが作品づくりきっかけでした。そうしていく内、周りの方からお褒めの言葉を頂いたり、後押ししてもらったりして、徐々にものづくり作家としての基盤が出来ていったという感じです。その辺りから、〖いつか作家として自分の足でしっかりと立って生活できるようになりたい〗と思うようになり、京都在住時代は各方面のイベントに出店し始めていました。

-(当時の作品を写真で見せてもらい)確かに、ものづくりを始めた当初と今とでは作風が随分違いますね。だけど糸や刺繍などは当時からお好きだったんですね。-

糸やリボンが昔から好きで、段々と今の作風になっていきました。店名も糸や刺繍に絡めた名前にしたいな、という思いで〖糸やひもを1本により合わせる〗という意味を持つ《綯う》に決めたんです。




理想の生き方・人との関わり方。理想の暮らしを求めて尾道へ


イベント出店で作家としての道を歩み始めたマイさん。そんな中尾道へ移住するきっかけとなった出会いがあったそう。


-イベント出店を始めて徐々に作品作りや手に取ってくれる誰かに向けて、という作家の基盤が出来てきたマイさん。そんな中尾道へ暮らしを移すきっかけは何だったのですか?-


科学技術などがあまりにも進歩しすぎたこの大きな社会の中で、私自身はというとシンプルで自分の手の届く範囲の小さな社会で人と人が協力し合って生きていくような、優しくてぬくもりを感じる暮らしがしたいという思いがいつも心の片隅にありました。そういうコミュニティーの場を自分で作れたらいいなという思いも。
イベント出店をしていると沢山の方と知り合う機会に恵まれ、その時向島在住の作家さんと親交を深める機会があったんです。色んな話をしていく内に、その方は自分の力で暮らしを整えたい。そして【色んな事をやってみたい・夢をカタチにしたい】と思うクリエーターや作家さんが集まれる風通しのよいコミュニティーの場を作りたいという考えを持っていらっしゃって、なら一緒にそれをカタチにしよう!と。動き始めると少しずつそれが現実となり、尾道への移住を決めるきっかけとなりました。


-【夢を持ったクリエーターや作家さん達が集まる場所】とても素敵ですね!その場所というのが以前アトリエがあったてへてハイツさん(元・てへてハイツ/現・竈キッチン&五右衛門風呂)なんですね。-

はい、以前お二人が来てくださった時はそこに初めてのアトリエを構えていた時でした。


-そうです!とても魅力的な場所だったのを覚えています。なんだかワクワクするような空間でした。居心地の良さそうなテラス、そこを囲うように皆がそれぞれの空間を作りながら、だけどきちんと共存していて、施設でありながら人と自然が共存しているような、のんびりとした時間が流れていたのを覚えています。-




尾道移住。人々を受け入れる尾道の〖空気感〗とは


そんな出会いもあり、コロナ禍の2020年に移住を決めたというマイさんですが、移住の際に感じた事や〖暮らす場所〗としての尾道の印象もお伺いしました。


-【移住】と一言でいっても決断に至るまで色んな悩みや大変な事もあったんじゃないですか?-



私の場合は有難い事に、移住前に住まいも仕事も決まっていたのでスムーズに移住が決まった感はあります。 それにやっぱり尾道に知り合いが居る、というのもとても心強かったですね。 移住したいな、と最初に思い始めてから実現するまで、トータルすると2年位かな。 尾道のまちや人は移住を受け入れる心の広さというか空気感を自然と放っているので、移住への不安よりは楽しみの方が大きかったかなと思います。 やっぱり海や山、自然に囲まれるって、大小ありますが人の心をのんびりと開放的にしてくれるんじゃないかなぁと感じますね。


-向島への移住を決め、刺繍作家として新しい環境で活動を始める事となったマイさんですが、刺繍アクセサリーに加え現在はドライフラワーやアレンジ作品も多く並んでいますよね。以前からお花を使った作品作りを考えていたんですか?-


私の場合、一旦刺繍を始めるとものすごく没頭してしまうんです。そして没頭しすぎちゃうと好きな事でも多少しんどくなっちゃう時もあるんですよね。
そんな時には一旦手を休めてお花を摘みに行ったりそれを飾ったりアレンジしたり、そういう息抜きの意味で当初はお花と向き合っていました。すると意外にもそこにも需要があったみたいで。それがきっかけでお花のアレンジも作品として手掛けるようになっていきました。





-息抜きの一つが今やマイさんにとって作品の要になっているなんて、凄いですね。センスももちろんですが、刺繍作家だけでなくお花も取り入れるという柔軟性が、自由で楽しい事が好きなマイさんらしいです。 移住後向島で暮らしてみて、私たち地元の人だと見落としがちでもある尾道や向島の魅力ってどんなところでしょう。-



尾道や私の暮らす向島って〖日本の海外〗みたいだなぁって時折思う事があるんです。のんびりとした穏やかな時間の流れ方。近からず遠からずのなんとも心地よい人との距離感。
土地柄なのか、人のあたたかさと自由さがあるんですよね。元々人の往来が激しい港町だったからこその、他を受け入れる力の大きさというか、移住してくる人々に対しての心の広さもとても魅力的。尾道には他の町にはない独特な空気が流れていると思いますよ。
移住を決めた時はクリエイティブな人たちの集まる場を作りたいと思っていましたが、今思うとそもそも尾道にそういう人たちを集める力があったんだと思います。


居心地の良い暮らしとその必要性



-尾道・向島のまちの魅力って、私たちにとっての何気ない日常の一コマなんだろうなと改めて感じました。日常が魅力っていうのもまた凄い事なんでしょうね。-

町の魅力ももちろんですが、私にとっては人のあたたかみを感じるのもここで暮らす魅力のひとつです。
私が出会った尾道の方たちは、愛情深くてうそのない人たちばかり。温かみのある人との繋がりって、居心地のよさを感じる上で一番大切な時間かなって思います。表面的ではない、血の通ったやりとりが出来るコミュニティーの中で暮らしていくのが私の理想だったので、尾道での暮らしは私にとって必然だったのではないかなと思います。幸せな関わり合いは生きていく上でとても必要なことだと思うから。


-マイさんの理想の暮らし方が詰まった尾道ですが、実際に尾道に移住したマイさんだからこそ知る、尾道移住を考えている方に向けてのアドバイスみたいなものがあれば是非教えてください。-


移住するとなると生きていくための仕事や生活など、考える事は色々あるとは思いますが、まずは尾道に訪れて気になるお店にどんどん行ってるみといいと思います。その中で知り合いが出来ると色んな話も聞けるし、自然と移住へのリアリティを感じられるんじゃないかな。是非ここにも遊びに来てください!




尾道を魅力的な町だと笑顔で語ってくれるマイさんに〖温かい人たちとの繋がりと居心地の良い環境〗、生きていくうえでこれ以上大切なものはないんじゃないか、とお話を聞きながら感じると同時に
尾道にそんな環境やコミュニティーが在る事の素晴らしさを改めて感じる時間となりました。





名前       古里舞
出身地      熊本県
好きな食べ物   チーズ
趣味       料理・散歩
好きな花     クリスマスローズ(うつむくようにひっそりと咲いているのに力強いところ)
いつかいってみたい場所  長野・北欧
子どもの頃の夢      おかしやさん
今後の夢や目標      森の妖精になりたい(植物に囲まれて自然と対話しながら暮らしたい)






刺繍と花とあれこれ 綯う-nau-

広島県尾道市向東町

OPEN 12:00-17:00

定休日 火・水・木曜日

駐車場 有




このブログを書いた人

カナ

尾道生まれ・ほぼ尾道育ち。

尾道・千光寺山のロープウェイガールやツアー関係の仕事に就きながら20代を過ごす。その後2人の女の子を育てながら人と関わる仕事に就き、現在は〖尾道スーベニア〗の運営に携わる。

尾道で働く人々にフォーカスした取材ブログ〖私が尾道で働く理由〗担当。

空想の世界が大好きで頭の中で色んなことを考えるのが日課。食べることと、小説を読むこと、人間観察も大好き。







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