もう一度、こども達の記憶に残る場所に…元中学校にひっそりと佇むカフェ
尾道・瀬戸内の美味しいものや楽しいことをお届けするお取り寄せサイト、尾道スーベニアです。
今日は尾道の観光市街地から北へ車で約20分、尾道市原田町まで足を伸ばしてみました。
向かった先は豊かな自然に囲まれた町、原田町にある〖原田芸術文化交流館-やまそら-〗(以下やまそら)。2014年に閉校となった中学校を地元住民の手で再活用した新しい憩いの場で、一歩中に入るとまるで学生時代にタイムスリップしたような懐かしい感覚を味わえる空間が広がっています。
校内の廊下には子供たちが使っていたであろう跳び箱や身体測定用の体重計、理科の実験器具など、そのひとつひとつをゆっくりと眺めながら歩くだけでも懐かしい気持ちで自然と心がワクワクしてきました。
イベントスペース・レンタルルームとして親しまれているやまそらですが、そのほかにも予約制の布屋さん・ほっと寛げるカフェや談話室、季節に併せてキャンプやドローン体験など、様々な顔を持っています。
今日はそんなやまそらの管理人でありPERCH CAFEの店主も務めている清水さんにお会いしてきました。
原田町は人口約1,200人が住む山あいの自然豊かな町。美味しいぶどうが採れる産地で有名ですが昔はももや梨などその他の果物栽培も盛んだったそうです。自然が溢れ、のどかでゆったりとした時間が流れる穏やかな町の顔を持つ一方で人口は年々減少し、少しずつ寂しさも感じられるようになってきました。
そんな中地域の子供たちが通う中学校が2014年、ついに閉校となってしまいました。
このままだと原田はどんどんさみしい町になってしまう、もっと賑やかで活気あふれる町にしたいという地元住民の熱い思いから翌年、旧尾道市立原田中学校は〖原田芸術文化交流館-やまそら-〗という新しい形で生まれ変わりました。 地域交流の場や地元住民の活躍の場としても活用したい等沢山の思いの元カタチとなったやまそらですが〖学校はなくなってしまったけど思い出の場所は残したい〗そして〖このやまそらをこどもたちの記憶に残る場所に〗というテーマが強く掲げられているそう。その思いを乗せ月日を重ねるごとにやまそらは地域になくてはならない“楽しい”が溢れる場所となっていきます。
1階の廊下をゆっくりと進むと展示室・談話室を過ぎた一番奥側にある素敵な佇まいのCAFEからコーヒーの濃く優しい香りが漂ってきました。中に入ると笑顔で出迎えてくれたPERCH CAFEの店主、清水さん。優しく朗らかな雰囲気を持つ清水さんにやまそらとの出会いについて伺いました。
やまそら立ち上げ当時、清水さんは3人の子供を育てる専業主婦でした。約10年専業主婦として原田で暮らしてきた清水さん、当時から『地域や社会で役に立つことをやってみたい』という思いがあったそうで、地域の人たちが輝ける場としてのやまそらに魅力を感じ、やまそらの一員として地域に役立ちながら自分自身も楽しめる事をしてみたいと思うようになりました。事務局長を筆頭に集まった地元の人達とのミーティングを続け清水さんはこのPERCH CAFEを開く事に。元々は違った形でやまそらに関わる思いでいたそうですが、お話を聞き進めると、3人の子供たちに美味しいものや地元で採れた新鮮な食材を食べさせたい、食べ物で家族を幸せにしたいという思いが溢れていて、美味しいものを作り、それを届けるお仕事にぴったりの方だなと感じました。
やまそら開設時のミーティングで《こういった、人が集まる施設の中にコーヒーを飲んだりゆっくり食事をする場所は必要不可欠》という話からオープンしたPERCH CAFE。カフェ経験のない中からスタートした清水さんですが、やると決めたらとことんやり進める性格からランチやケーキなど、地域の食材をふんだんに使った手作りの美味しいものを沢山提供していました。
その後やまそら管理人も務めるようになり、リーフレット作成やイベントの管理、カフェの仕込みや接客など、時間以上にやることにあふれる日々を送っていたそう。そんな中で新型コロナウィルスの影響や店舗の改装など環境の変化がありながら、清水さんが思う〖やまそらで働く理想のカタチ〗を考え続けカフェの在り方も少しずつ形を変えていったと言います。現在では飲み物のテイクアウトを中心に曜日や週末によってワッフルの日、ランチの日、甘いものの日などを作り訪れる人たちを笑顔にしています。
2015年の4月にオープンしたこのPERCH CAFEももうすぐ8年が経とうとしています。
今までを振り返り、8年間PERCH CAFEを続けてこれたのは沢山のラッキーの積み重ねだった、と清水さんはお話して下さいました。カフェで使う食材に悩んでいると地元の農家さんが声を掛けてくれ新鮮で色鮮やかな食材を豊富に使えることになり、美味しいコーヒーを提供したいと考えていると地元でコーヒーを豆から焙煎している方から美味しいコーヒー豆を提供してもえる事になったり。HP作成やイベントの切り盛りなど、毎回大きな区切りごとに周囲から温かい手が差し伸べられるこの環境があったからこそここまで来れたのだと教えてくださいました。清水さんの思うラッキーの積み重ねは、原田で暮らす住民同士のなんとも温かい距離感があってこそ生まれた必然のラッキーだったのだなと感じずにはいられませんでした。
原田から少しずつ人が減り、町が寂しくなっていく姿を垣間見る機会が増え、最初はだた悲しんでいたけれど悲しむだけでは何にもならない、それならば思うだけじゃなく自分も何か動かなくては!という思いから大きな一歩を踏み出しやまそらの一員となった清水さんですが、振り返ってみるとそれは自分の為にもなっていた、と最後に語って下さいました。 やまそらではオープンから現在に至るまで沢山のイベントやマルシェなどを開催おり、その中で出会った人々との繋がりや、若い世代の人々が〖ここで暮らしたい〗と思える地域づくりに繋がる活動は、清水さんが実現したかった『地域に役に立つことをしたい』という思いを形に出来た時間でした。 地域の活性化を願うだけではなく、その場所づくりやそれを維持していくパワーは計り知れないものですが、訪れた人々からかけられる言葉や笑顔が、巡り巡って清水さんがやまそらで頑張り続けていられる原動力の一つとなっているのです。 地域の役に立ちたい、という思いから踏み出した清水さんの一歩は、今、巡り巡って原田町が盛り上がる原動力のひとつとなっているのだと感じました。
清水麻紀(しみずまき) ・出身地 尾道市原田町 ・血液型 O型 ・好きな食べ物 鯖の押し寿司 ・いつか行ってみたい場所 フィンランド ・子供の頃の夢 美術の先生、または編み物の先生 ・最近ハマっている事 アロマテラピー ・最近の悩み 睡眠時間が足りない
Perch Cafe(パーチカフェ) 原田芸術文化交流館 やまそら内 OPEN 11:00~16:00 定休日 毎週月曜・火曜(不定休あり)
NPO法人 原田芸術文化交流館 やまそら 〒722-0202 広島県尾道市原田町梶山田66 開館時間 10:00〜16:00 月曜・火曜休館
このブログを書いた人
カナ
尾道生まれ・ほぼ尾道育ち。
尾道・千光寺山のロープウェイガールやツアー関係の仕事に就きながら20代を過ごす。その後2人の女の子を育てながら人と関わる仕事に就き、現在は〖尾道スーベニア〗の運営に携わる。
尾道で働く人々にフォーカスした取材ブログ〖私が尾道で働く理由〗担当。
空想の世界が大好きで頭の中で色んなことを考えるのが日課。食べることと、小説を読むこと、人間観察も大好き。